囃子方

成田奏の舞台風景

 


能楽の囃子方(はやしかた)とは笛・小鼓・大鼓・太鼓の
四拍子(しびょうし)からなる楽器隊の事です。
囃子方は通常各役1名ずつ舞台に立ち、謡や舞を囃し立てる役割として、
能楽における「音楽」を担当する重要な役割を担います。

「謡」と「囃子」は密接な関係にあり
互いに刺激を与え合いひとつの舞台を作り上げます。
そこに生まれる「舞台の密度」を高める事で魅力的な舞台になり、
出演者も観客も充実した時間にする事が出来ます。
つまり囃子方は単なる伴奏ではなく
1人の役者として舞台に立つ必要があります。
 これらが囃子方の背負う責任であり舞台に立てる事の喜びです。



舞台

成田達志の舞台風景



小鼓、大鼓、太鼓は演奏中、掛け声をかけます。
掛け声は演奏においていくつかの役割があり
一つは舞台を円滑に進行する事です。


掛け声を掛けることによって演者が互いの意思を主張し、
演奏のリズムやノリをひとつにする事で舞台を円滑に進める事が出来ます。
曲調や演者の主張に合わせ掛け声を工夫する事で曲の雰囲気を醸し出します。
それにより観客が曲の世界に入り込むことが出来、
ワンランク上の舞台を作り出す事が出来ます。


掛け声は舞台進行において大変影響力があり囃子方が最も重要視しています。
また囃子方によって個性が出せる大きな武器であると言えます。


ナニワノヲトの写真1




室町時代〜現在にかけて1度も絶える事無く受け継がれている能楽ですが、
時代に合わせて変化している部分も多く、囃子の手組(パターン)や、
シテ(主役)の型(舞等の動き)に合うようなリズムの変化等、
演奏内容・演出は歴史的な観点から見ても大変興味深いものです。


江戸時代、全国各地で上演されていた能楽(当時猿楽)は
同じ地域の役者で「座」を組み、「座」によって様々なルールが敷かれ、
地域により上演形式が異なりました。
またシテ方の流儀、上演する場所、時間によって
演奏が変化する事もあります。







小鼓の素材




小鼓はいくつかの部品を組み上げ、一つの楽器と成っています。

まず表裏2枚の皮です。
こちらは馬の薄い部分の皮を、漆で装飾・補強しています。




革・皮(かわ)

小鼓の表皮
小鼓の裏皮




皮は「柔らかさ・張り・厚さ」が重要な要素でどれが欠けても
舞台では使えません。
いい音色を出す為には、柔らかくシッカリと張った皮を使います。
皮に張りを持たせるために、円状の鉄の輪に、皮をきつく縫い付けてあります。










調緒(しらべお)

小鼓の調緒2

 



この紐は調緒、調べと呼びます。
こちらは麻の繊維を繰り紐状にした物を、小鼓一丁に対して二掛使用します。
この調べ現在は紅花という植物で、朱色に染色した物を使用します。
しかし古くは色によって使用者の格を表したと言われており、
他にも数色使われていました。







胴(どう)




小鼓の胴は乾燥させた櫻の木から削り出し、
主に漆と金で「蒔絵」と言う装飾を施しています。
櫻の木は古くから日本にあり、硬く頑丈な為使用されています。
蒔絵は様々な絵柄があり、写真の胴は網干千鳥(あぼしにちどり)です。

他にも様々な蒔絵があり、
「音色が張る」と「値が張る」「根を張る」等の掛詞から、
伊勢海老等の高級食材や大根・タンポポ等、植物の蒔絵も多く見られます。

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